材料の決定
木製看板の材料として、安価なものではつなぎのある集成材や巾はぎ材、一枚ものであれば寸法に切り出した角板や耳付き板などがあります。耳付き板は天然木や自然木などとも呼ばれますが、形状が一点物の材料を使用する場合は木材に合わせてレイアウトを作成します。木製看板材の選定は見た目の印象が大事な要素であるため、まず木地色や木目の強さなどを目安にするのがイメージしやすいと思います。
材種選びで、特にこだわりがなく長持ちすれば良いという方に、当社では桧かケヤキをお勧めしています。流通量も多く全般的に質が良いからです。見た目が大局的なのでどちらかを選んでいただければほぼ間違いないかと思います。
データ制作
看板の意匠を作成し書体やバランスを確認します。当社ではまず内容をご提示頂きデータを制作します。お持ちのロゴデータ等があればAIデータにてご入稿頂けます。
手書きの文字もデータ化します。墨の擦れ部分や和紙の墨にじみなどは線の勢いに大切な要素ですが、グラデーションが表現できない彫刻にそのまま使用することはできません。筆の勢いをなるべく忠実なまま細部を簡略化した原稿を作り直した上で2トーンデータを作成します。
彫刻加工
木材全面をマスキングして文字部分を彫刻します。当社で行う彫刻方法は主に下記の3種類で、彫刻機での加工と職人による手彫りで製作しています。他にも篆刻(てんこく)などのように浮かし彫りや文字以外の部分にノミ跡を入れる加工もあります。
蒲鉾彫り(布袋彫り) | V字彫り(薬研彫り) | 平彫り |
彫刻文字といえばこの彫り方。まず輪郭線を彫り込み、文字内部がふっくらと盛り上がる様なイメージで曲面に仕上げてゆく彫刻方法。大きな文字にも対応。 | 線の中央に向かって深く角刃で彫った様に断面がV字になる彫刻方法。力強い印象もあり、比較的小さめの文字や細い線に使用する事の多い加工。 | 底面が均一の平面になる彫刻方法。シンプルでくせのないすっきりとした印象の仕上がり。カタカナや英字、イラストなどに使用する場合が多い。 |
塗装下地
彫刻した部分は240~400番のペーパーで仕上げておきます。塗料を密着させる下地として木部シーラーを塗布し彫刻部分表面の目止め処理をします。蒲鉾表面などのように仕上がりをフラットにする場合はポリサフやパテで木目を消します。プラサフで全体を整え仕上げ塗装前の準備完了です。
仕上げ
彫刻した部分に仕上げのウレタン塗装をします。艶無し、艶有りによっても仕上がりの印象が違いますので意匠作成時にイメージしておくとよいと思います。金箔加工の場合はここから箔押し工程へと移ります。
いかがでしたか。当社でも行っている一般的な木製彫刻看板の製作方法をご紹介しました。注意点としましてはやはり下地の木材保護塗料です。様々なものが市販品として手に入りやすいですが、まず塗膜を作るタイプの塗料には要注意です。木材の呼吸を妨げず劣化の過程が自然であるような、またメンテナンスが可能な塗料を選ぶことが重要だと考えます。